この記事では、傍聴した裁判の会話記録を書いていきます。(当事者に配慮し内容はぼかしています)
記憶で補完している部分が多いためご了承ください。
また、傍聴のしかたや弁護士・検察官・裁判官が付けているバッジについて触れた記事【裁判傍聴】初めて行ってきた感想もおすすめです。
・60代後半の男性
・同様の事件で前科2犯。二年前には千円程度の万引きで罰金30万円を科せられている。
・2つのアルバイトを掛け持ちしている。
・借金500万 (退職金1500万受け取り後、知人から持ちかけられた新規事業立ち上げに挑戦したが失敗。借金を負う)
コンビニで2回に渡り、おにぎりを盗んだ疑い。
複数店舗で窃取の疑いがあるが、起訴されている2回に絞って審理を行う。
・被告人であるご老人は、初めはヒモがついたベストのようなものを着て座っていました。飄々とした印象。(両隣には警察官)
・弁護士は40代くらいの女性。柔和な印象。
・相対する検察官は50代とおぼしき男性。整髪しスーツを着こなすできる男のイメージ。
・裁判長は40代後半男性。あらゆることに動じなさそう。サポート役で50代男性。
以上のメンバーで始まりました。(ちなみに傍聴人は自分だけでした)
裁判が始まると、ご老人を拘束していたベストが脱がされます。被告人として証言台に立ち、裁判長から以下の説明を受けます。
黙秘権があること、自分の不利になることを一切話さなくてもそれが判決に影響することがないこと、逆に話す場合は裁判の証拠として記録されること。ご老人は元気に「はい」と答えます。
この後、検察官から事件のあらましと提出した証拠品について説明がなされました。
弁護士から数々の質問が行われます。口調はとても優しいが内容はそれほどやさしくないです。意外と責めるのだなぁと思いました。
また、被告人をまっとうな生き方に戻そうと働きかけている印象。以下、弁護士の質問と被告人の受け答え
弁護士
・あなたは過去に千円ほどの万引きで捕まり、30万円の罰金を支払っています。もったいないことだとは思いませんでしたか?
⇒被告人 はい、とても思います!!
・あなたはアルバイトを2つ掛け持ちしていますが収入はいくらありますか?
⇒被告人 25万円/月です。
・それは結構な額とは思いますが、その内借金の返済額はいくらでしょう?
⇒被告人 8万/月です。
・借金を差し引いても生活に十分な額が残ると思いますが、なぜお金がなくなってしまったんでしょう?
⇒被告人 フィリピンパブです。お恥ずかしい話ですが、憂さ晴らしのために使ってしまいまして。。。月に5万ほどです。
・お金がなくなってしまったとき、奥様に頼ろうとは思いませんでしたか?
⇒女房とは別居していまして、借金でも迷惑をかけていますし、これ以上はと。。。
・今後同じようになったときあなたはどうしますか?
⇒まず、フィリピンパブをやめようと思います。プラモデルとかそういったことが昔好きで、それを楽しもうと思います。
また、お金がもしなくなったら女房や知人に頼ろうと思います。
今拘置所に一ヶ月ほどいるのですが。本当に辛くて。。。自分よりもっと年上の人が布団を片付けるときにふらふらしてましてね、こうなりたくないと。もう二度とここには来たくないと強く思いました。
検察官
・あなたは同じ店で二度万引きをしています。
なぜですか?家も近くはありませんが。
⇒それはそのー、売っているものが好きでね。良く使ってました。
・あなたは万引きをする際、一部商品は会計をしています。ポケットに入りそうなものは隠し、大きいものはお金を払う。なぜでしょうか?
⇒やっぱり大きいものはね、ちゃんと払った方がいいと言いますか。はい、ちゃんとはらいました。
・フィリピンパブでお金を使ったと言いましたが、なぜ食費がなくなるまで使ってしまったのでしょう?
⇒やっぱり憂さ晴らしで、すいません。こればっかりはすいませんとしか言いようがないです。
何よりここを出たらコンビニの店長さんに謝りに行きたいです。本当に。
検察官
・被告人は一般客を装い、商品を懐に隠しながらも一部を会計するなど極めて悪質。
・同じ店から二度窃取した理由も監視カメラの設置が甘かったとの供述もございます。
・また、同様の前科や本審理案件と別店舗でも窃取の疑いがある。常習性があり反省の言葉は信じがたい。
・懲役1年を求刑します。
弁護士
・被告人は十分な所持金をもちながらフィリピンパブで散財し、家族知人に頼ることもせず窃取を働いたことは極めて悪質で許されるものではありません。
・しかし、アルバイトを掛け持ちするなど勤労意欲があります。また、他の趣味を持とうとしていることや、コンビニへの支払いもすぐに応じております。
・拘置所での日々も被告人に深い反省を促しており、再犯の可能性も低いと思われます。
何卒寛大なご判断をお願いいたします。
裁判長
本件は被告が罪を認めていることから量刑を争うものになります。
被告人から最後に言っておきたいことはありますか?
被告人
ありません。
裁判長
わかりました。判決は次週になりますが、弁護人・検察官、12/1午後はいかがでしょうか?
検察官・弁護士
問題ありません。
裁判官
そうですか。ではこれにて閉廷します。来週はどうぞよろしくお願いいたします。
以上が私が傍聴した裁判の流れです。ドラマと違いわりと淡々と進みます。しかし、目の前で繰り広げられる出来事は日常で触れることのない世界。
非常に濃密に感じました。また機会を見つけて傍聴してみたいと思います。